2004-07-13up
馬車の中へ雨あがりの清々しい風が入り込んできて 窓を閉めようとする俺の手を止めさせた。 街を抜けてお邸までの道すがら、オスカルと2人でこうして 馬車に揺られているこの時間が俺は好きだ。 俺たちはずっとこの国の未来を幾度となく話していた。 時には熱く思いを言葉にする彼女と等しく、 俺にも思い描いている未来はあった。 「言ってみろ」 彼女は少し揶揄するような口調で俺に聞いて来る。 言っても…それは…。 言葉にしようとすると、自分がひどく自己中心的に思えてきて 「俺だって色々考えるさ。」そう、俺は嘯いた。 オスカルは黙って俺を見たあと、窓の外に視線を移して 街道から見える遠い地平の落日を眺めた。 「さっきアランと何を話してたんだ。何が同じだって?」 今日ジュードポームの側で聞いた、アランとオスカルの 会話を思い出して俺は話を誤魔化そうとした。 「 政治家になってみてもよかったと言っていた。」 「アランが?お前が?」一瞬、誰の事を言ってるのか判らなくて オスカルに聞き返すと落日を眺めたまま続ける。 「アランに、お前はどうなんだ?と言ったら 自分はテッポウ隊で良いのだと」 「はは…。」 俺の笑い声にオスカルが振り向いて少し首をかしげた。 「だから私も、同じだと言ったんだ。」 次は笑えなかった。 やがて落日が強烈な紅い光を放つ。 馬車の中は真っ赤に染まり、自分の手もオスカルの髪も紅く見えた。 「オスカル…」 「アランといえば、前にあの唄を唄っていたぞ。 ほらお前がよく歌ってる…」 「オスカル」 目頭が急に熱くなった。だからといって何も流れてくるわけでも ないのに、辺りに影が覆うかのように静かに昏くなって 俺は思わず目を細めた。 「どうかしたか」 笑えない冗談だ、そう言いたいのに何も言葉が出てこない。 「私を見ろ。」その声に驚いて彼女を見た。 そして俺は、安心させるように彼女に微笑む。 俺が泣いてる様に見えた?きっと落日が目に映っているだけなのに。 「…夕日が眩しいだけだ」 そしてお前のことも。 彼女の手が俺の顔に伸びてくる。自分の頬にその優しい手を感じて あまりの世界の眩しさに俺はまた目を細めた。 FIN え〜、参考までにアラン夜明け6月です。。。 HOMEへ。 |
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